「遺品整理の費用は誰が負担するの?」と、気になる人は多いでしょう。
遺品整理は、大切な人との別れの後に直面する重要な課題です。故人との思い出が詰まった品を整理することは、心理的にも体力的にも大きな負担でしょう。また、金銭的な負担も発生するため、誰が支払うのか不安を抱える人がいるのが現状です。
遺品整理費用は基本的に相続人が負担しますが、故人の財産状況や相続人の経済状況など、さまざまな要因によって変わります。
本記事では、遺品整理費用を負担すべき人についてわかりやすく解説します。相続放棄した場合の扱いについても取り上げているため、相続が近いと感じている人はぜひご一読ください。
目次
遺品整理費用は原則として相続人が支払う
遺品整理費用は基本的に「家の所有者や相続人が負担する」として、民法上の規定に基づいています。ただし、孤独死のケースや複数の相続人が存在する場合、賃貸物件での死亡の場合など状況によって費用負担者や分担方法が異なります。
遺品整理を始める前に、必要な法的手続きの確認や、関係者間での費用分担についての話し合いをおこなうことが望ましいでしょう。後々のトラブル防止につながります。
故人に借金や債務が残されていた場合、相続人には相続放棄という選択肢があり、遺産とともに債務も放棄できます。
遺品整理費用を負担するパターン
遺品整理費用を負担する人を決めるにあたり、主に以下3つのケースが考えられます。
- 相続人が複数の場合
- 相続人がいない場合
- 相続を放棄した場合
それぞれのケースにおいて、遺品整理費用の負担方法は異なります。詳しく見ていきましょう。
相続人が複数の場合
相続人が複数いる場合は、法律上の規定に基づいて遺品整理費用を均等に分配する必要があります。
相続が発生した際には、以下の法的な手続きをおこなう必要があり、関連する費用についても相続人間で適切に分担しなければなりません。
- 債務の返済
- 税金の申告と支払い
- 不動産の売却
- 解体費用
費用は相続財産から支払うことが一般的ですが、相続財産が不足する場合は相続人個人の財産から負担する必要があります。
相続人がいない場合
故人が賃貸物件に住んでおり、連帯保証人や相続人が見つからない場合、物件の管理や維持に関する費用は管理会社や大家が負担することがあります。ただし、管理会社や大家が勝手に部屋に入って遺品を処分したり整理したりする権利は、法律上認められていません。
管理会社や大家が対応するためには、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てるという法的な手続きをおこなう必要があります。
「相続財産管理人」とは、相続人が存在しない、もしくは相続人全員が相続放棄をした場合において、故人の遺産を適切に管理・処分する法的な権限を持つ者のことを指します。
管理会社や大家が遺品整理を実施する際は、必ず選任された相続財産管理人から正式な許可を得てから進めましょう。
【参考】相続財産清算人の選任|裁判所
相続を放棄した場合
故人に借金があった場合は、相続放棄をすると遺産整理費用や債務を負担しなくてもよいことが法律で定められています。
相続放棄の手続きは、管轄の家庭裁判所に申請します。申請期限は故人の死亡を知ったときから、もしくは相続財産の全容が判明してから3ヵ月以内です。期限を過ぎると原則として相続放棄はできません。
相続放棄を検討している場合は、早めに決断しましょう。
遺品整理費用の相場
遺品整理の一般的な費用相場は、作業内容や地域により異なりますが、小規模な場合で3万円程度から、大規模な整理では25万円以上となります。
料金は主に部屋の広さと部屋数によって決まり、整理が必要な空間が広くなるほど費用も比例して増加します。
間取り別の相場料金は、以下のとおりです。
間取り | 料金相場 | 作業人数 | 作業時間 |
---|---|---|---|
1R・1K | 3万円~ | 1~2名 | 1~3時間 |
1DK | 5万円~ | 2~3名 | 2~4時間 |
1LDK | 8万円~ | 2~4名 | 2~6時間 |
2DK | 9万円~ | 2~5名 | 2~6時間 |
2LDK | 10万円~ | 3~6名 | 3~8時間 |
3LDK | 15万円~ | 4~8名 | 5~12時間 |
4LDK以上 | 22万円~ | 4~10名 | 6~15時間 |
部屋が広いほど作業時間が長くなり、必要な作業人員も増えるため、人件費を含む総額が増加します。
遺品整理費用を安くするポイント3つ
遺品整理の費用を抑えるためには、以下3つのポイントを意識することが重要です。
- 最低限の物を自分で処理する
- 不用品を買取りしてもらう
- 相見積もりを取る
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
最低限の物を自分で処理する
自分で遺品を整理すると、専門業者への依頼を最小限に抑え、全体的な費用の削減が可能です。遺品整理を専門業者に依頼する場合、整理が必要な物の量に応じて料金が設定されます。
事前に整理し、できるだけ物の量を減らすと業者に依頼する作業量を抑えられ、費用の節約につながります。
ただし大型の家具や電化製品などの粗大ごみや、重量のある大きな物の処分は、安全面を考慮して無理な作業は避けたほうがよいでしょう。専門の業者に依頼することをおすすめします。
不用品を買取りしてもらう
遺品の中で不要な物を買取りしてもらうと、処分や整理にかかる全体的な費用を効果的に抑えられます。まだ十分に使用できる状態の家電製品や家具、生活用品などは、専門の買取業者に適切な価格で買取りしてもらえる可能性が高いです。
不用品を処分する際にかかる費用を節約できるだけでなく、買取りによって新たな収入が得られるため、経済的なメリットも大きいでしょう。
遺品整理の専門業者に依頼すれば不用品の査定から買取り、残りの遺品の整理まで一括して対応してもらえるため、時間と手間を大幅に節約できます。
相見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取得して比較検討すると、費用を大幅に抑えられます。業者によって料金体系や見積もり内容が異なるため、複数の見積もりを比較することは賢明な選択です。
相見積もりを通じて、業者の料金プランやサービス内容、対応の質、実績などを詳しく比較検討できます。予算に合わせながら、自分のニーズや要望に最適な業者を見つけましょう。
遺品整理費用の支払いにあたり押さえるべき注意点3つ
遺品整理費用は高額になる場合もあることから、故人や遺族にとって重要な問題です。適切に対応するために、以下3つの注意点を押さえておく必要があります。
- 相続税の計算に影響する場合がある
- 相続放棄しても相続遺産の管理責任がある
- 相続放棄ができない場合がある
適切な対応を取れば、遺品整理費用の問題を円滑に解決できるでしょう。
相続税の計算に影響する場合がある
遺品整理費用は相続税の計算過程において、一定の条件下で控除対象として認められる可能性があります。控除の対象として認められるためのポイントは、遺品整理が債務控除の要件を満たしているかどうかです。
債務控除とは、相続開始時に存在する債務や、相続人が実際に負担することになった費用を相続税の課税価格から差し引ける仕組みのことです。
ただし、遺品整理に関連する費用のうち、債務控除として認められるのは必要不可欠な作業や処理に関する部分に限られます。すべての遺品整理費用が、控除対象となるわけではありません。
遺品整理費用を相続税の控除項目に含めたい場合は、税理士に具体的な状況を確認するのがおすすめです。
相続放棄しても相続遺産の管理責任がある
相続放棄をしても、相続財産に不動産が含まれていた場合、不動産に対する管理責任が法律上発生します。
不動産の管理責任とは「相続放棄をした人であっても、次の相続人が確定し、その相続人に不動産が正式に相続されるまでの期間、不動産を適切に管理しなければならない」という法的な義務のことです。
管理責任は民法第940条において明確に規定されており、相続放棄をした人にも適用される重要な法的義務となっています。
【参照】e-Gov法令検索
次の相続人に不動産が引き継がれるまでの間、定期的な清掃や修繕やリフォームなど、必要に応じたメンテナンス作業が必要になります。不動産の資産価値が維持できるようにしなければいけません。
相続放棄ができない場合がある
以下の状況においては法律上、相続の放棄が認められない可能性があるため、それぞれ押さえておきましょう。
- 相続財産が判明してから3ヵ月以上経過した
- 相続財産を使ってしまった
- 遺産分割協議書にサインした
- 遺品整理をした
相続放棄の可能性や手続きについて不明な点がある場合は、専門知識を持つ弁護士に相談すると、適切な判断ができます。
遺品整理費用のトラブルを避ける方法3つ
遺品整理は法律が関わってきたり、複数人でおこなったりする場合があることから、費用面でトラブルが発生することは珍しくありません。遺品整理に関する費用トラブルを未然に防ぐための方法は、以下のとおりです。
- 相続人間で協議をおこなう
- 合意書を作成する
- 捨ててはいけない物を把握する
方法を実践すれば、遺品整理費用のトラブルを効果的に防げます。
相続人間で協議をおこなう
遺品整理費用の分担をスムーズに進めるには、相続人全員が十分に納得できるよう、丁寧な話し合いや協議が必要不可欠です。
相続人それぞれの現在の経済状況や将来の見通しを慎重に考慮し、長期的な視点で公平性を保つことが何よりも重要です。協議を進めるために、以下の重要なポイントを意識しましょう。
- 積極的にコミュニケーションを取る
- それぞれの価値観を尊重しあう
- 第三者の意見を聞く
- 記録を残す
相続人間での協議が難しい状況に陥った場合は、早めに専門家の意見を求めることをおすすめします。遺品整理の専門業者や相続に詳しい弁護士など、経験豊富な専門家からの具体的なアドバイスを受ければ、円滑な解決ができるでしょう。
合意書を作成する
遺品整理による後々のトラブルを未然に防ぎ、円滑に進めるためには、相続人全員による合意書の作成が望ましいです。
遺品整理では、とくに費用分担について相続人間でトラブルが発生するケースが少なくありません。整理にかかる経費や保管費用、処分費用などさまざまな費用が発生する可能性があります。
相続人間で十分な協議をおこない、合意書を作成すれば、遺産分割における重要な証拠資料となります。遺産分割の手続きがよりスムーズに進行し、相続人全員が納得できる形で進められるでしょう。
遺品整理業者に依頼する際は、相続人全員の合意を得たうえで契約を結ぶことがおすすめです。業者の選定や費用の支払い方法についても、事前に相続人間で話し合いをおこない、明確な合意を得ておくことが重要です。
捨ててはいけない物を把握する
遺品整理をおこなう際には、法律上の重要書類である契約書や遺言書などは必ず保管してください。将来的な法的手続きや相続に関わる重要な証拠となる可能性があります。
骨董品や貴金属、美術品などの価値が不明な物品は、必ず専門の鑑定士や査定士に依頼しましょう。素人判断では、本来の価値を見逃してしまう可能性があります。
遺品整理を始める前に、家族間で保管すべき思い出の品や重要な書類について話し合い、リストを作成しておくとよいでしょう。遺品整理の際に判断に迷う遺品がある場合は、遺品整理の専門家や業者に相談すると、適切な判断を得られます。
遺品整理費用は誰が支払うかまとめ
遺品整理の費用負担は基本的に相続人が払いますが、故人の財産状況や相続人の経済状況、遺品の量や状態などさまざまな要因によって異なります。また、遺言書で費用負担について指定がある場合は、内容にしたがって進めてください。
費用面で不安がある場合は、できるだけ早い段階で相続人間で話し合いの場を持ちましょう。各自の経済状況や負担可能な金額について意見を交換し、公平な分担方法を検討することが大切です。
専門業者に依頼する際は複数の業者から見積もりを取得し、作業内容や料金体系、追加料金の有無などのサービス内容を細かく確認することが重要です。業者の実績や評判なども確認しておくとよいでしょう。
遺品整理は単なる片付けではなく、故人の思い出が詰まった大切な作業です。できるだけスムーズに、そして故人の想いを大切にしながら、丁寧に進めていきましょう。
遺品整理の処分にお困りの場合は、山本清掃へご相談ください。山本清掃は、環境省が推奨する「優良認定事業者」の認定を受けています。メールや電話、LINEにて、お気軽にお問い合わせください。