親族が突然亡くなったとき、冷静に遺品整理を進められる人は多くありません。特に孤独死の場合は精神的なショックも大きく、不安を感じる人がほとんどでしょう。
親族が孤独死した場合、遺品整理は法定相続人がおこないます。しかし、孤独死の場合は遺品整理の前に特殊清掃が必要な場合が多く、親族だけで清掃や遺品整理を進めるのは非常に困難です。
感染症のリスクや精神的な負担もあるため、安全かつスムーズに遺品整理を進めるために、一般的には特殊清掃にも対応できる専門業者に作業を依頼します。
本記事では、孤独死の遺品整理の進め方について、網羅的に解説します。注意点や業者の選び方まで紹介するので、見積もりや作業を依頼する前にぜひご一読ください。
目次
孤独死したときの遺品整理は誰がする?
孤独死したときの遺品整理は、基本的には法的相続人がすることになります。詳しく見ていきましょう。
親族が亡くなった場合
親族などが孤独死した場合は、遺品の片付けは法定相続人がおこないます。法定相続人とは民法で定められた相続の権利を持つ人のことで、配偶者や子ども、父母などが該当します。
相続放棄をしない限りは故人の遺品は法定相続人が相続し、遺品の整理も責任を負うことになります。孤独死の場合、精神的な負担や作業量が多岐にわたることから、実際の遺品整理作業は専門業者に依頼するケースは少なくありません。
親族以外が亡くなった場合
前提として、遺品整理は故人の遺族や連帯保証人などに依頼するのが一般的です。故人が親族ではない場合は、原則として法定相続人以外の人が遺品整理をおこなうことはできません。
遺族や連帯保証人など故人の関係者がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合は、家主が法的な手続きを経たうえで遺品整理をおこなうことになります。
故人に財産がある場合は、利害関係にある人が家庭裁判所に申し立てをし、財産管理人を選任したあと遺品整理をおこなうのが一般的です。また、遺族や保証人がいない場合の遺品整理や特殊清掃の費用は、家主の負担となることがほとんどです。
孤独死の遺品整理の特徴
孤独死の遺品整理は、通常時と比べて以下の2点が異なります。
- 健康被害のリスクが高い
- 遺品のほとんどが処分対象になる
ひとつずつ見ていきましょう。
健康被害のリスクが高い
孤独死が起きると腐敗臭や体液、害虫などが部屋に発生することにより、健康被害のリスクが高まります。感染症などのリスクをともなうことに加え、肉体的また精神的負担も大きく、通常の遺品整理とは異なり遺族や関係者が遺品整理をおこなうのは難しくなります。
特に、現場の状態が悪い場合は安易に自分で片付けようとすることでより状況を悪化させ、近隣に迷惑をかけることもあるくらいです。安全かつスムーズに遺品整理を済ませるためにも、特殊清掃も同時に依頼できる業者に作業をお願いすると良いでしょう。
遺品のほとんどが処分対象になる
孤独死の場合、遺品のほとんどが腐敗臭や細菌などの影響を受けているため、一般的にそのまま処分されます。特に、金銭的な価値のない生活用品や衣類などは消臭や除菌などの手間を考えると、そのまま処分したほうが安全だと判断されることが多いです。
また、腐敗臭が染み付いた大量の遺品を自分で処分するのは難しく、正しい方法で処分しなければ衛生面や臭いなどで周囲に迷惑をかける可能性も否定できません。遺品整理作業に慣れている業者なら、大量の遺品も安全かつ近隣に留意したうえで処分してくれるため、安心して任せられるでしょう。
孤独死したときの遺品整理の流れ
孤独死があった場合の遺品整理の流れは、以下のとおりです。
- 見積もりを依頼する
- 特殊清掃をおこなう
- 遺品整理をおこなう
詳しく確認していきましょう。
見積もりを依頼する
まずは遺品整理業者を複数選び、現地見積もりを依頼しましょう。部屋の状況や荷物の量などを見てもらったうえで、作業内容や料金の費用の詳細な見積もりを出してもらうことが大切です。
遺品整理の費用は現場の状況や荷物の量などによって大きく異なるため、比較が難しいと感じることもあるでしょう。しかし、複数社から見積もりを取ることで料金の妥当性を判断しやすくなります。
特に特殊清掃が必要な場合は費用が高額になることが多いため、料金の内訳や作業内容をしっかり確認することが重要です。
特殊清掃をおこなう
孤独死の現場では、専門の機材や薬剤を使用し、消臭や除菌・害虫駆除などをおこないます。腐敗臭や体液・汚染が確認された場合は通常の清掃で対応するのは難しいため、専門知識や安全のための装備が必要になります。
そのため、業者を選定する際は特殊清掃がおこなえるかどうかを優先することが重要です。
部屋の原状回復が必要な場合は、壁紙や床の張り替えなどの作業を実施することもあります。業者によってはリフォームまで対応してくれるところもあるため、必要に応じて作業を依頼するとよいでしょう。
遺品整理をおこなう
特殊清掃と並行、または完了後に、遺品の整理や処分がおこなわれます。家具や家電など不要な物は処分し、貴重品や思い出の品など必要な物を丁寧に仕分けしていきます。
通常の遺品整理であれば、状態のよい不用品などは買取りしてもらえることも多いです。しかし、孤独死の場合は汚れや臭いなどが染み付いていることも多いため、安全のためにも遺品を処分されることは少なくありません。
遺品整理に立ち会いたい場合や確認したい遺品がある場合などは、あらかじめ希望を伝えておくと良いでしょう。
孤独死した故人の遺品整理を自分でおこなう際のポイント
孤独死の現場は、想像を絶する状態であることが多いため、無理して自分でおこなわないことも大切です。それでも、自分で取り組まざるをえない場合は、以下4つのポイントを押さえておきましょう。
- 特殊清掃が終わってからおこなう
- マスクや手袋を着用する
- 遺品は清潔にしてから残す
- 相続放棄は慎重におこなう
詳しく解説します。
特殊清掃が終わってからおこなう
遺品整理は自分でおこなえても、特殊清掃はプロに任せたほうが安全かつスムーズに進められます。特に遺体から血液や体液が出ている場合や異臭が発生している場合は、必ず特殊清掃を依頼してください。安全に作業できる状態になったことを確認したうえで、遺品整理をおこないましょう。
特殊清掃が終わるまでは、近隣に被害を及ぼさないためにも部屋の換気をしてはいけません。また、部屋にある家財のほとんどは衛生面を考えて処分することになります。特殊清掃と同時に処分してくれる業者がほとんどなので、あらかじめ遺品の処分についても相談しておきましょう。
マスクや手袋を着用する
遺品整理をおこなうときは、必ずマスクや手袋を装着しましょう。素手で触ることで感染症などのリスクが高まるため、業者が消臭や除菌などをおこなった後であっても、必ず装着したうえで作業に取りかかってください。防護服やエプロンなどがあると、さらに安心です。
孤独死でなくても、遺品整理をおこなうときは安全面や衛生面からマスクや手袋の着用が勧められています。作業前に必ず用意しておき、一度使った物は安全のためにも再利用せず処分してください。
遺品は清潔にしてから残す
孤独死の場合、部屋が汚染されていることが多いため、形見分けなどをおこなう場合は遺品を清潔にする作業が必要です。たとえ特殊清掃が不要な場合であっても、念のために消毒や除菌・消臭などを必ずおこないましょう。
遺族に形見分けをする場合は相手に気持ちよく受け取ってもらうためにも、遺品をきれいにする作業は欠かせません。
業者の中には、手元に残す遺品の消臭消毒を別途実施してくれるところもあります。残したい遺品がある場合は、事前に確認しておくと安心です。
相続放棄は慎重におこなう
親族が孤独死した場合、相続放棄をすれば遺品整理をおこなう必要はなくなります。しかし、相続放棄をすると遺品整理の作業や費用負担から逃れられる反面、たとえプラスの財産があっても一切相続できなくなる点には注意が必要です。
相続放棄の手続きをした後に撤回はできないため、故人に預貯金や不動産などがある場合は、手続きをする前に専門家に相談することをおすすめします。
また、相続放棄を予定している場合は遺品整理をおこなってしまうと相続を承認したとみなされ、放棄が認められない場合があります。急いで対処しなければと焦る気持ちはわかりますが、特殊清掃などを依頼する前にまず専門家の意見を仰ぐと良いでしょう。
孤独死した場合の遺品整理の費用相場
遺品整理の費用は遺品の量や間取り、対応するスタッフの人数などで大きく異なります。孤独死の場合は、さらに特殊清掃の費用や原状回復、リフォームなどの費用が発生するため、高額になりがちです。遺品を手元に残したい場合は、消毒や除菌、消臭などの費用が別途かかることもあります。
遺品整理の費用相場は地域や部屋の状況、業者などによっても異なります。同じ作業内容で複数社に見積もりを依頼し、内容を比較・検討したうえで、安心できる業者に依頼するとよいでしょう。
孤独死の遺品整理の費用相場は、以下のとおりです。
作業内容 | 費用 |
---|---|
特殊清掃費用 | 6〜50万円 |
原状回復費用(リフォーム・修繕) | 30万円〜 |
遺品整理費用の相場
部屋の広さ | スタッフの人数 | 作業時間 | 費用 |
---|---|---|---|
1R/1K | 1〜2名 | 約2〜4時間 | 約3~8万円 |
1DK | 2〜3名 | 約3〜5時間 | 約5~12万円 |
1LDK | 2〜4名 | 約4〜6時間 | 約8~15万円 |
2DK | 3〜4名 | 約5〜8時間 | 約10~20万円 |
2LDK | 3〜5名 | 約6〜9時間 | 約13~25万円 |
3LDK | 4〜6名 | 1~1.5日 | 約18~30万円 |
4LDK以上 | 5〜8名 | 1.5日以上 | 約25~50万円以上 |
部屋がごみ屋敷になっていたり、遺品が大量にあったりする場合は、費用が加算されます。業者によっては、供養や遺品の配送などのオプションが利用できる場合もあります。
必要なオプションは遺品の状態や遺族の希望によって異なるため、あらかじめ依頼したい作業を見積もり前にまとめておくとよいでしょう。
遺品整理業者の選び方5選
遺品整理業者を選ぶときは、トラブルを避けるためにも以下5つのポイントに沿って検討しましょう。
- 一般廃棄物収集運搬業の許可があるか
- 作業内容が豊富か
- 料金は妥当か
- 信頼できる業者か
- 遺品を丁寧に扱ってくれるか
ひとつずつ確認します。
一般廃棄物収集運搬業の許可があるか
業者が回収した遺品を処分するためには、市町村からの「一般廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。必ず許可を保有している業者に依頼してください。許可を得ていない業者に依頼すると、不法投棄や高額請求などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
業者が許可を保有している場合、自社の公式サイトや自治体のホームページなどに記載しています。京都市が認可している許可業者は、以下のページで確認できます。
許可がない場合でも、許可を得ている業者と提携していれば遺品の回収は可能です。その場合は、業者のホームページなどに記載されていることが多いので、事前に確認しておきましょう。
ホームページにも情報がなく、自治体のサイトにも記載がない場合は、安全のためにも依頼を避けることをおすすめします。
作業内容が豊富か
孤独死の場合、遺品整理作業だけでなく、特殊清掃に対応している業者に依頼することが大切です。特殊清掃といっても作業内容は業者ごとに異なるため、現場で使用する機材や薬剤、作業工程などもチェックしておくと安心して依頼できます。
業者によっては供養や葬儀、形見分けの発送まで引き受けてくれます。対応できる作業内容は業者によって異なるため、業者を選ぶときに確認しておきましょう。
事前に対応可能な作業やオプションの内容、料金などを確認しておくと、安心して依頼できます。
料金は妥当か
遺品整理を業者に依頼するときは、事前に見積もりを取るのがおすすめです。できれば複数社に依頼し、作業内容や金額などを比較してから選ぶようにしてください。また、特殊清掃が必要な場合は、対応の可否や追加費用の有無を事前に確認しておくことが大切です。
見積もりの明細が明確で、料金体系がわかりやすいところであれば、安心して依頼できます。料金がわかりにくいところや明細が不明瞭なところ、内容を聞いてもはっきり答えてくれないような業者は避けるようにしましょう。
特に料金はトラブルになりやすいので、不明点や心配なことがある場合は、必ず解決してから依頼するようにしてください。
信頼できる業者か
遺品整理では、大切な遺品を遺族の立ち会いなく整理することも少なくありません。そのため、口コミや評判・公式サイトなどをよく確認したうえで、実績のある信頼できる業者に依頼することが大切です。
相談時や見積もり時の対応もチェックしておくと、安心して依頼できます。遺品整理士の資格があれば、専門知識のあるスタッフが遺品整理にあたってくれますが、決して必要な資格ではありません。資格の有無は参考程度に留め、総合的に判断することをおすすめします。
遺品を丁寧に扱ってくれるか
遺品のほとんどが処分されるとはいえ、故人の大切な遺品を丁寧に扱ってくれるところに依頼したいと考える人がほとんどでしょう。遺品は基本的に丁寧に取り扱われますが、やはり作業には人間性が見えるものです。仕分けや形見分けに丁寧に対応してくれる業者を選ぶと、遺品整理をスムーズに進められるでしょう。
特に孤独死の場合は精神的なショックも大きいため、遺族の気持ちに寄り添った対応をしてくれるところに依頼するのがおすすめです。依頼や遺族の希望にしっかり耳を傾けてくれたり、遺族への気遣いが感じられたりする業者なら、気持ちよく作業を依頼できるでしょう。
孤独死の遺品整理でよくある疑問
最後に、孤独死の遺品整理でよくある疑問に回答します。
孤独死の遺体を引き取り拒否することはできますか?
遺体の引き取りは拒否できます。遺族が拒否した場合は、自治体が火葬や埋葬をおこなってくれます。
ただし、遺体の引き取りを拒否する場合も、相続人として遺産を引き継ぐかどうかの判断は必要です。相続放棄の手続きをしなければ自動的に相続人になるため、早めに判断また手続きをおこなうことが大切です。
相続放棄をした場合は借金などのマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も放棄することになる点に注意してください。弁護士など専門知識を持った人に相談してから、冷静に判断すると良いでしょう。
孤独死の遺品整理の費用は誰が払うのでしょうか?
孤独死した場合の遺品整理費用を負担するのは、原則として相続人です。相続人全員が相続放棄をした場合は相続財産管理人が専任され、残された財産の中から支払われることになります。
孤独死した場所が賃貸住宅で、遺族や相続人と連絡がつかない場合は、家主が一時的に費用を負担する場合もあります。その場合は後日、相続人などに費用が請求されるため、親族が賃貸住宅に住んでいる人は覚えておきましょう。
なお、故人に財産がなく相続人もいない場合は、自治体などが処理に当たることもあります。
孤独死の遺品整理まとめ
孤独死が発生した場合、遺品整理にはさまざまな配慮と法的手続きが必要です。特に遺品整理は衛生面や健康への被害を考えると専門業者に任せるのが望ましく、専用の装備や薬剤などを用いたうえで、安全かつ迅速に進めなければなりません。
相続の手続きや相続放棄の判断は早めに専門家に相談し、慎重に進めましょう。相続放棄を予定している場合は、遺品を勝手に処分すると相続を承認したとみなされることがあるため、弁護士などに相談してから特殊清掃などを依頼することをおすすめします。
特殊清掃などを業者に依頼するときは、資格の有無などを確認したうえで信頼できる業者を選ぶと、スムーズに遺品整理を進められるでしょう。
山本清掃では、遺品の分別や処分、特殊清掃までをワンストップで対応しています。特殊清掃や遺品整理作業のほか、廃棄物の処理などに長年携わっているため、孤独死などの特殊な現場でもスムーズな作業が可能です。安心してご依頼いただけるように、遺品供養やリフォームなどのオプションも用意しております。ご相談は無料ですので、メールや電話、LINEにて、ぜひお気軽にお電話ください。